近年、我が国の団地やマンションの共同生活に新たな課題が浮かび上がっています。外国人の受け入れが進む中、外国人が地域社会に溶け込んでほしいのですが、生活トラブルの増加により、偏見が広がりかねず、共生が阻まれる可能性も指摘されています。

===埼玉県川口市内の「芝園団地」===
埼玉県川口市の芝園団地は、かつて「チャイナ団地」とも呼ばれ、中国人住民が多く住む地域として知られています。約4,400人の入居者の半数以上が外国人で、入居は1978年に始まり、1990年代以降日本人の住民が減少し外国人が増えました。
UR賃貸住宅なので外国籍でも入居がしやすく、主に中国人のIT系企業勤務者が多く住んでいます。

過去には排外主義団体による差別行動が起きましたが、通訳の配置や中国語冊子の配布などの努力が実り、2014年以降は生活習慣の違いによるトラブルが減少しました。
ただし、国籍にとらわれない新たな課題も浮かび上がっており、高齢者の独居や二人暮らしの日本人と、若い子育て世帯の外国人との、世代の違いが生活トラブルの原因になるケースや、国籍にかかわらず自治会に入らない人も増えてきました。
近所付き合いをしない人が増えているのは日本人ばかりの地域と同じです。

===健全な共同生活を築くためには===
生活トラブルのない共存関係を築くためには、次の具体的なポイントが考えられます。

① コミュニケーションと理解の促進
住民同士のコミュニケーションが不可欠です。言葉の壁を乗り越え、異なる文化や習慣に理解を深めるための場を創り出すことが重要です。地域イベントやワークショップを通じて、住民同士の交流促進。

② ルールの透明性と共有
住民が共有するルールの透明性が求められます。地域全体で共有されたルールにより、偏見やトラブルの発生を最小限に抑え、安心して暮らせる環境の構築。

③ 地域への参加と貢献
外国人が地域社会に根付くためには、地元のイベントやボランティア活動への積極的な参加が不可欠です。地域社会への貢献は、共同体全体の一体感を高め、偏見の軽減につながります。

④ 言語サポートと情報共有
言語の壁を感じる外国人住民に対して、地元自治体や住民が言語サポートを提供する体制を整備して、情報共有が円滑に行われれば、誤解やトラブルの発生を防ぎます。

⑤ 教育と理解の促進
異なる文化や背景に理解を深め、共生の重要性を啓発する活動が欠かせません。地域全体が共生の理念を受け入れることで、偏見の減少が期待できます。

===安心かつ調和のとれた共同生活===
「芝園団地」と同様の地域社会が他にもあります。神奈川の「いちょう団地」も多くの外国人が暮らしています。このような地域は今後ますます増えると考えられます。
「ゆるやかな共生」には、お互いを理解するための、積極的なコミュニケーション文化的な違いを受け入れ、尊重する意識が育まれれば、共生の基盤が築かれます。

政府や地域住民は、具体的な施策を通じて、言語サポートや文化交流のプログラムを提供し、異なるバックグラウンドを持つ住民が共感し合える場を構築する努力により、調和のとれた共同生活が実現します。
共生の理念を具現化することで、豊かな多様性を抱えた社会が構築され、誰もが共に成長し繁栄する未来が描けます。

執筆:日本住宅性能検査協会 研究員 秋山将人