令和2年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が公布されました。賃貸住宅は、単身世帯の増加等を背景に、我が国の生活の基盤としての重要性が高くなっているなか、特にサブリース業者については、家賃保証等の契約条件の誤認を原因とするトラブルが多発し社会問題となっています。

そのため適正な運営を確保するために、この法律が制定されました。

===どのようなトラブルか===
トラブルで最も多いのが、家賃の減額請求です。家賃の増減額請求権は借地借家法32条1項に定められています。しかしサブリース事業者はオーナーに、この内容を正しく伝えていませんでした。ある日突然に、サブリース事業者から家賃の減額を請求され、そこで初めて借地借家法32条1項を知ることになります。
減額しなければ契約を解除すると迫られることもあるようです。

もうひとつが契約解除です。賃借人(サブリース事業者)は、契約解除が容易にできるのですが、オーナーからの解除は、非常に難しいのです。これは借地借家法26条と28条に規定されています。

サブリース新法後に示された「特定賃貸借標準契約書」「重要事項説明書」には、この2点について必ず最初に示すことを、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」に記されていますが、実際はサブリース新法施行前の契約では、ほとんど説明されていません。

===法律施行後の契約更新===
賃貸借契約を合意更新したら、賃貸借期間についての改正民法が適用されるのが法務省の考え方です。つまり①改めて更新合意をする場合も、②期間満了前に当事者が異議を述べないために自動的に更新される場合も、③単に期間だけを更新する当事者の更新合意の場合も、すべて改正民法が適用されるとしています。

ただし、借地借家法に基づく賃貸借契約の法定更新(賃貸人の更新拒絶に正当理由がないために更新される等)には、改正民法施行以後の当事者の意思と関係がないため、改正前民法が適用されます。
当然ですが、更新時にはあらためて新しい「重要事項説明書」を提示することになります。

===法律の内容を知ってトラブルを防ぐ===
多くのサラリーマン投資家や、相続税対策でアパート経営を始める方は、不動産業者の言を信じて、自身が学ぼうとしません。法律だけではなく税務も会計も知らなくても問題ないと考えているようです。
その結果、様々なトラブルに巻き込まれてしまいます。借地借家法は、普通の法律とは違い、賃借人が大企業で賃貸人が知識の少ない一個人であっても、賃借人が保護される法律です。理不尽と言われても、当面は変わりそうにありません。なおさら、法律を学んでください。

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不動産トラブル
<賃借権の相続>(2)
(質問)
民間アパートに住んでいた父(借主・別居中)がなくなった。
条件のよい物件であり、遺産相続として引き継ぎたいが、名義変更を家主から拒否された。
賃借権を相続することはできないのでしょうか?

(回答)
前項で述べたように、賃借権は相続することができますが、相続人が同居していたか別居していたかは問いません。
したがって、家主の意向に拘わらず、相続人は賃借権を相続することができ、住む権利を持つのです。