財務諸表の「引当金」という科目について知っていないと、企業の実態を誤って判断することがあります。
L社は、2018年に建物の施工不備が発覚して、5年間で売上高は25%減少しました。
そして2020年3月期には約680億円の赤字決算となってしまいました。倒産するのではないかと言われました。その後規模を縮小しながら収益性を回復させ、2022年には黒字化としました。これでもう大丈夫ではないかと、取引先はひと安心しているかに見えます。はたして本当はどうでしょうか。

===引当金とは===
引当金とは、企業会計において将来発生する特定の費用や損失に備えるため、あらかじめ当期の費用として準備しておく見積もり金額のことです。つまり将来の損失の見込みで、その時の実際の損失ではありません。
L社の場合、2019年3月期の決算では、引当金として約600億円を計上しています。
実際の損失が、680億円あったわけではありませんでした。引当金の内、施工不備を修繕引当金は約500億円だったので、実際の営業キャッシュフローは約70億円の小幅な赤字でした。

===勘定あって銭足らず===
赤字を強調することで、借上げ仕入賃料を減額請求を行い、また人件費の削減などを行い、会計上は黒字化になりました。しかし、L社の場合、施工不備を解消するために補修工事を行っています。
この費用は引当金を振り替えて会計処理を行います。一方でキャッシュ・フロー上、補修工事費の支払いのため多額の資金が必要となってきます。決算では黒字であっても、実際は火の車状態です。つまり「勘定あって銭足らず」と考えられます。

===V字回復は可能か===
このような会社の、V字回復は可能でしょうか。回復のためには、まずはキャッシュフローの回復が必要です。また新たな収益源を確保しなければなりません。
実際は、施工不備解消のための補修工事には、これからまだ費用がかかります。関連会社として老人福祉サービスを経営していますが、この会社も創業以来連続して赤字です。

新規の工事受注もストップしている現状では、新たな収益源の確保はかなり難しいと考えられます。
想定ですが、キャッシュフローの回復のための「仕入賃料を減額請求」だけでは、追いつかなくなると、採算性の悪い取引の切り捨て「契約解除」が始まるでしょう。すでに一部では「契約解除」が始まっています。

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不動産トラブル
<部屋の移動>
(質問)
契約時には、日当たりのよい上階の部屋が満室だったので、仕方なく日当たりのよくない部屋に入居していたが、このたび、上階の部屋が空いたので、家主に、部屋の移動を申し入れた。

家主は、「部屋の移動はかまわないが、管理会社を通じて手続きをしてくれ」と言ってきた。
そこで、管理会社に、家主の承諾を得たので、部屋移動の手続きをしたいと申し入れたところ、「書類作成手数料として更新手数料と同じ金額を支払ってもらう」と言われた。
1万円以上の費用になるので、拒否したいのだが、だからといって、部屋移動もできないのも困るし、どうすればよいのでしょうか?

(回答)
家主が部屋移動を承諾しているわけですから、あとは、「契約書の修正」、あるいは「契約書の作り直し」が必要ということになります。

契約期間そのものが、従来の契約のままであるのであれば、家賃や部屋番号のみを修正すればよいだけだと思いますので、その場合には、「契約書の修正」のみでよいでしょう。

しかし、家主が契約書の作り直しを求める場合には、それに従う必要があるでしょう。
問題は管理会社を通すことによって多額の手数料を請求されることですので、家主に事情を説明して、家主との間で直接手続きを行ってもらうようにするか、それとも、家主から、手数料の減額(書類作成手数料なら、2~3千円程度に抑えてもらう)を働きかけてもらうように、うまく説得してみてください