建築費が高くなっています。東京都の鉄筋コンクリート造の建築費は、この10年で5割以上高くなっています。主な原因は労働力不足と言われていますが、どうやらそれだけではなさそうです。資材も高騰しています。2020年の秋から昨年2022年1月までの1年半で木材は73%、鋼材は44%も高くなっています。
===建築費はますます高くなる===
これは日本だけの傾向ではありません。この20年、米国や欧州でも建築資材費は高騰しています。米国の指標を見てみると、LaborCostよりMaterialCostのほうが、値上がり率は高いようです。今後、BRICSだけでなく、アフリカなどの国々の経済発展とともに、資材の需要は高くなると想定されます。
日本は1990年代初めのバブル崩壊後約20年間、建築需要が伸び悩み、建設市場は買い手市場でした。その後の10年でようやくバランスがとれてきました。しかし現在は需要は高くなっていますが、供給可能な工事量は減少してしまいました。今後もこの傾向は続くとされています。需要は高いが供給が少ない「売り手市場」になってしまいます。
===建築資材のイノベーション技術===
このコラムで昨年CLT建材を紹介しました。これは間伐材などを強度の高い建材に生まれ変わらせる技術です。このCLT建材では、20階程度の高層建築もできます。日本でも採用が始まっています。CLT建材の主要材はすべて国産で賄えます。
もうひとつセルロースナノファイバー(CNF)が、開発中です。これも植物由来の素材です。アルミやプラスチックの代替素材と言われています。家電や自動車だけでなく建材としての活用が期待されています。
これらの建材は、機能性、省エネルギー性だけでなく耐久性も高く、住宅の長寿命化に貢献すると考えられています。
===住まいのSDGs「少し高くても、100年住める建物を」===
建替えとリフォーム(リノベーション)とどちらが安くできるかと言えば、リフォームの場合はすでにある素材を活用できるのに対して、建て替えだと新たに用意すべき建材が多くなります。また、建て替えだと解体した家の処理にも廃棄費用がかかりますので、コストがかさみます。100年の費用を考えると、最初の建築+2度の建替え費用です。リフォームの場合、15年毎に大規模のリフォームをすると最初の建築費+5度の大規模リフォームになります。計算方法にもよりますが5割程度はリフォームのほうが安く上がりそうです。
まず、躯体は100年の耐久性を考え、耐震性を高くして、他の災害にも強い住まいにしておけば、安心して暮らせます。一方それとはべつに、設備は当初から15年毎にリフォームをすることを前提にすると、設備の設置方法も配管や配線の位置も更新しやすい自由度の高い建物に設計することになるでしょう。技術革新に遅れることのない暮らしを得ることができます。
100年だけではなく200年を目指す住まいも可能です。
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不動産トラブルトピックス(Vol.12)
<家賃の値上げ>(1)
(質問)
契約更新時に、家主から「家賃を値上げする」という通告を受けたが、
拒否することができますか?
(回答)
まず、契約書に、家賃の値上げに関する事項が入っているかどうかを確認する必要があります。もし、家賃値上げに関する事項があれば、その内容によっては、ある程度拘束されることもあります。
しかし、本来、家賃は、家主と借主の合意で決定する事項ですし、家主の一方的な通告では認めがたいものです。
家主が、一方的に通告してきたということですが、その値上げ幅・値上げ金額が妥当ではないと思える場合には、借地借家法の第32条に規定する借賃増減請求権にもとづいて、家賃の一方的な値上げに対抗して、裁判で新しい家賃が確定するまでの間、家賃を供託するという手段もあります。
ただし、裁判で家賃が確定するには、不動産鑑定士による家賃の査定が必要となり、かなりの費用がかかってきますので、実際には、家主との話し合いで、ある程度のところで妥協するほうが賢明でしょう。
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