通常わたしたちは、水害を「洪水」と呼びますが、「洪水」は水害の一種で“河川の氾濫”を指します。堤防を境に河川が市街地の外側にあることから「外水(または、外水氾濫)」と呼びます。 一方、「洪水」に対し、堤防の内側、すなわち市街地内を流れる側溝や排水路、下水道などから水が溢れる水害を、「内水(または、内水氾濫)」と呼びます。実は都市の水害の多くは、内水氾濫です。
===内水氾濫の起きる状況===
雨水は、雨樋や道路の側溝から下水管に流れていきます。下水管は、最大降水量を1時間あたり概ね50mm/hrとして設計され設置されています。ということは、50mm/hrを超える雨が降ると、雨水は道路に溢れてしまいます。
全国の3時間降水量150ミリ以上の年間発生回数を見ると、最近10年間(2013?2022年)は、平均年間約34回です。50年前の10年間(1976?1985年)は平均年間約19回でした。この50年で1.8倍増加しています。これらの変化には「地球温暖化が影響している可能性がある」と言われています。
===雨水は逆流する===
降水量が50mm/hrを超えると、雨水が流れなくなるだけではなく、逆流します。これが内水氾濫です。マンホールから雨水があふれだし、道が川のようになって、歩くのは困難になり、場合によっては、車も押し流されてしまいます。
内水氾濫は、高台だからとか、マンションの2階だからといっても安心できません。行き先がなくなった水は戻るしかないのです。雨水が流れずに、雨樋の中を逆流してマンションの2階のベランダに溢れたり、トイレに逆流したりする例は少なくはないのです。
===備えとして===
自治体では、防災策として遊水地を設けています。その最も大きなものとして首都圏外殻放水路があります。テレビで見られた方も多いと思います。それでも、線状降水帯が生まれると、狭い範囲で内水氾濫がおきます。そのために、まず側溝などの清掃をすることです。また、樹木の根が排水管に入り込むと、流れを悪くしてしまいます。
そして、やはり保険の備えは大切です。保険に加入するだけではなく、どのような被害があると保険が支払われるかを確かめておきます。もし自宅で被害が発生したときは、必ず写真を撮っておきます。雨が治まって掃除をすると、被害を証明できにくくなります。保険会社に、請求する際に写真を添付することで、保険が支払われやすくなります。
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不動産トラブルトピックス(Vol.8)
<テナント入居時のトラブル>(1)
ビル賃貸借では様々なトラブルが発生します。
テナント入居時、契約期間中、更新時、明渡時などのトラブルを一通り取り上げ、現在の法制度の下でどのような対処ができるかを説明していきます。
例えば、倒産などの理由によって契約を履行できないケースが多いのです。
経済情勢だけではなく、それと同時に社会全般が権利意識に目覚めてきていることもあります。
社会構造もこの権利意識の覚醒によって変化してきているのです。
契約した賃借人と実際に入居したテナントが違う場合にどう対処するか
1.契約者名と違う名前の会社がテナントと同居している場合
賃貸借契約を取り交わした会社の看板は確かに出ているが、何か得体の知れない表札もいっしょにかかっていることがあります。
このような場合、貸主側は賃貸借契約を解除できるでしょうか。
このケースでのまず第1のポイントは、転貸になるかということです。
例えば、入居している会社が当初契約した会社の子会社のとき、契約違反と言えるのか。
一般に子会社を入れるケースはそれほど問題になりません。
大抵、家主の了解を得られれば問題にはなりません。
その他には、会社が倒産したため、別会社を作ってそのまま事業を引き継ぐことも考えられます。
要するに名前は別だが実態は変化していない。
契約の実態が変更されれば、転貸になるが、上記のようなケースは実態が変更されたとは考えにくい。
家主の承諾なしに転貸して契約に違反すれば、一般常識から言えば契約を解除できそうです。
しかし、借地借家法では賃借人の軽微な違反があったとしてもそれを理由に賃貸借契約の解除までは認めないという判例が定着しています。
つまり、形式上契約に違反していてもそれが貸主に対する背信行為、もしくは貸主との信頼関係を破壊するまでに至らないとされる場合があります。
そのため、軽微な違反であれば貸主は契約解除まで請求することはできないのです。
軽微な違反かどうかの判別ポイントは信頼関係を破壊したかどうかです。
残念ながら、この信頼関係破壊の基準が明確でないために、これが争点になってしまうのです。