今回から、行動経済学シリーズをお送りします。行動経済学は、心理学者カーネマンが、2002年に「ノーベル経済学賞」を受賞したことで脚光を浴びました。
カーネマンは経済学者ではなく心理学者です。ノーベル賞には心理学賞がないため経済学賞を受賞したと言われています。

===行動経済学とは===
従来の経済学では、生産者・消費者は「合理的に利益を最大化するように意思決定する」とされていました。生産者はより高く売るために行動を行います。
消費者は同じ品質であれば、より安いものを購買するという考え方です。ところがこれでは説明できないことが見受けれました。

そのひとつが「損失回避性」です。例えば「この「このツールを利用することで年間30万円の利益がでます」よりも「このツールを利用することで年間30万円の無駄をなくせます」と伝えるほうが、消費者の損失回避性心理に訴えかけることができることです。

そこで従来の経済学理論に心理学的な視線・分析方法を取り込んで、経済活動の主体となる個人の行動選択に、より精緻に接近しようとする研究が進んできました。

===ナッジ(Nudge)===
そのひとつに、2017年にノーベル賞を受賞した経済学者「セイラー・サンスティーン」が提唱した「ナッジ」があります。「ナッジ」とは「肘で突っついて人の行動を促すこと」です。「行動を禁じたり」「経済的なインセンティブをあたえたり」することなく、ちょっとした提案で人の行動を促すことができるということです。

従来の経済学では、個人の利得の最大化で組み立てられていますが、行動経済学では、人々のなかに、公共に貢献したい気持ちがあることを訴えて効果を得ることができます。
環境省で「約50万世帯に省エネ上手な世帯やよく似た世帯の電気消費量との比較レポートを配布すると、約2?3%の省エネ効果が得られたという実証実験が報告されています。

規制や価格付けに頼らずに、エネルギー消費行動を変容させることが可能だったのです。

===ナッジでSDGsへの貢献===
例えば、賃貸住宅の入居者に「トイレ・洗面所を、人感センサー電球に変えます」と、お知らせしたらどうでしょうか。「消し忘れがなくなり、省エネ効果もあるね」と入居者は喜んでくれます。
「環境のことを考える大家さんだ」と評価も高くなるでしょう。入居者募集でも効果があります。
太陽光パネルを設置したお客様に、太陽光パネルの清掃・洗浄効果のチラシを配布してはどうでしょうか。洗浄をしてほしいと依頼が増える効果があります。
SDGsは、こんな小さな「ナッジ」から広がっていくと考えています。

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<不動産トラブル>
(質問)
入居後、部屋に入ったら、天井の照明器具が付いていなかった。
家主に苦情を申し入れたが、「照明器具は自分で付けてください」と言われた。
しかし、隣室の人は最初から照明器具が付いていたということなので、不公平だと思う。何とかならないのでしょうか?

(回答)
確認すべきなのは、契約前に、仲介業者で受けた「重要事項説明書」に、どのような記載がされていたかです。

もし、重要事項説明書で、「照明器具あり」というような記載があったとすれば、仲介業者に対して、「照明器具ありとなっていたのに、照明器具が付いておらず、家主に言っても付けてくれないので何とかせよ」とクレームをつけることができます。

しかし、重要事項説明書には、「照明器具なし」となっていた場合には、借主が照明器具をつけなければなりません。
「隣室の人は最初から照明器具が付いていた」というのは、前の入居者が、照明器具を付けたままで退去した可能性が大きいでしょう。

それに、仮に、隣室の人の契約では、照明器具を家主が負担したからと言っても、その契約を根拠に、照明器具を付けろと求めることはできないのです。
なぜなら、相談者の契約は、隣室の人の契約とはまったく無関係だからです。(なかなか空室が埋まらないような時期には、家主がいろいろとサービスすることがよくありますが、そういった特別サービスをすべての契約に求めることはできないのです)