借地借家法第32条では、建物の賃料が、相場の変動により近隣の同種の建物の賃料に比べて著しく不相当となったときは、賃料増減請求権が認められると定められています。賃借サブリース事業者は、この条項を基に数年毎に賃料減額請求をします。
不動産の知識に疎く、また契約解除を避けたいオーナーは渋々応じています。
===借地借家法32条は賃料増額を想定===
借地借家法は昭和18年太平洋戦争前に、銃後の家族の生活基盤を守るため制定されました。借地借家法32条は、大家さんが自分の都合で家賃を上げて、生活困窮者をださないための条項です。だから強行規定になっています。法律は減額を想定していません。ところが、弱者を守るべき法律が、大企業のサブリース会社の利益を優先する制度になってしまっているのです。
===借地借家法32条の不相当とは===
32条の不相当とは、賃料が社会情勢の変化により客観的に実情に合わなくなったことです。つまり従前賃料を当事者に強制することが、諸事情を考慮しても酷となるような場合です。賃料増減額請求は、事情変更の原則の適用です。つまりは、賃料が不相当になったか否かの判断要素は、必要諸費として、固定資産税・都市計画税、建物の維持修繕費、損害保険料、など管理に必要な費用が高くなったときに認められる場合にのみ適用されるべきです。
サブリース契約で、数年毎に賃料改定をサブリース会社からオーナーに請求している賃料減額は、この原則に当てはまりません。たんなる経営上利益を上げるための都合でしかありません。
===家賃は上げるべき===
では、賃料は社会情勢の変化により客観的に不相当になっているのでしょうか。経済的にCPI(消費者物価指数)から見ると、建物の維持修繕費と損害保険料は、全国的にかなりの上昇となっています。下がっているのは、建物の固定資産税だけです。物価水準から上がるべき賃料が、下がっているのです。つまりは、サブリース会社は、オーナーの知識不足をいいことに、まったく反対の減額請求をしているのです。
空き家が増えていて需給バランスからみると、家賃は低くならざるを得ない事情もありますが、これこそ企業努力で入居者の欲求にあった住宅にリノベーションして、賃料を増額すべきチャンスではないでしょうか。実際には、アイデアと企業努力で満室を維持しているアパートも数多くあります。
サブリース会社は、自らの企業努力の放棄のつけをオーナーに転嫁することをやめて、発想の転換をして賃料を上げましょうという提案こそ、今一番求められています。
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不動産トラブルトピックス(Vol.9)
<日割り計算>
(質問)
入居日が月の半ばだったのに、家賃は日割りではなく、1か月分を請求されたが拒否できるのでしょうか?
(回答)
家賃を日割り計算するかどうかという点については、法律上、「日割り計算しなさい」という義務はありません。
従って、家賃の精算を月単位とするのか、それとも日割りで精算するのかという点は、契約書の内容に従うことになります。
契約書に、「日割り精算しない」という規定があり、借主が承諾の署名・捺印をしているとすれば、日割り精算されなくても従うしかありません。
なお、たとえば、契約期間が○月△日~○○月(△の前日)日というようになっている場合で、
家賃の起算期間が、毎月△日~翌月(△の前日)日というようになっているなら、見かけ上は、日割り計算されていなくても、実質上の損害が発生しない場合もありますし、入居時に日割り精算しない代わりに、退去時に日割り精算する家主もあります。
そこで、家主に確認すべきこととしては、月々の家賃の計算期間はどうなっているのかという点と退去時に日割り精算するのかどうかという点です。
その上で、どう考えても、入居時に日割り精算してもらわないと損害が大きいというような場合には、法律上を盾にはできませんので、家主の良識に訴えかけるようにしながら、交渉していくことになるでしょう。
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