2016年にマンション標準管理規約が改訂され、外部専門家を含む役員が、理事会役員に就任できるようになり、また維持・管理を第三者に依頼できるようになりました。これにより、理事のなり手不足、管理不足の改善が期待されるとの意見もある。この改訂を積極的に採用し、理事会がなくても大丈夫と言い始めている管理会社があります。
これはとても、リスクの高い選択です。
しかも誤解のないように加えますと、標準管理規約は法律ではありません。管理組合の業務を外部に依頼するには、規約改正のために総会で3/4以上の賛成が必要です。
===利益相反の危険性===
本来は住民らから選んだ理事長が務める「管理者」の役割を、マンション管理会社に委託するケースがある。区分所有者の負担が減って助かると思う方がいるかもしれませんが。マンションの維持管理のための積立金を、管理会社の好きなように使われる危険性がとても高いのです。
あるマンションの場合、監事に任命された人が、管理費が毎月赤字で、修繕積立金もたまっていないことに気がついた。調べてみたら、住民のお金が管理会社にどんどん吸い取られてしまっていた。
また、都内のマンションで、マンションの修繕をしようと考えた時に、2億はあると思っていた修繕積立金が5000万円しかなかった。
こんな出来事はいくらでもあります。国は、ガイドラインを検討しているようだが、原因は区分所有者の無関心である。多額のローンを組んで購入したマンションを自分の資産として認識してないで無関心でいることが不思議である。
===理事会が機能しなくなると、管理費等の滞納者が増える===
管理費・修繕費等の滞納を督促を管理会社に委託していますが、管理委託契約書は、その期間を3ヶ月としているケースが多い。つまり4ヶ月以上の滞納の督促は、理事会が行うことになっています。それを知らないと滞納金額は増える一方です。場合によっては数百万にも膨れ上がります。また滞納が、5年以上たつと消滅時効となります。専門家に依頼して解決をするという考えもありますが、費用がかかるだけで、結局は滞納者を頑なにさせてしまいます。
多くの滞納者とお話をした経験から、お話すると、滞納された方は、一度に払えなくなっているので、どうしたら良いか分からなくなっているだけです。話し合いでほとんど解決しました。
===専門家という誤解===
マンション管理は、建築、設備、法律、会計など広い分野になります。この全てに熟知されている方は多くありません。マンション管理士と言っても、建築と設備について知らない人がほとんどです。
専門家に依頼するのは、管理組合の本来あるべき姿を逸脱しています。大切なのは区分所有者一人ひとりが素人として意見を言うことが大切です。何度もいいますが、一番危険なのは無関心です。
では、どうすればよいか、専門知識といってもマンション管理の分野に限れば難しくありません。お父さんは子供に「将来のために、勉強しなさい」といいます。お父さんに「あなたと家族の大切な資産を守るために勉強しませんか」と言います。
それでもわからないことができたときには、相談できる第三者機関や設計事務所と準備しておくことです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
不動産トラブルトピック(Vol.5)
<ビル賃貸借に適用される法律は何か>
(一時使用賃貸借とは)
一時的・臨時的な使用の場合、借家権は発生しません。
元来、一時的に建物を賃貸借しているためにその期間が終了と同時に権利も終了し、更新や正当事由を必要としない。
この一時使用賃貸借の適用にも難点があります。
それは、一時的・臨時的であるということを何によって証明するかということです。
当事者の合意によって、特約事項にすれば良いというのであればトラブルにはならなりません。
一時使用賃貸借という契約に確かになってはいるが、借主としては「それは家主の都合で勝手に明記したにしかすぎない。自分の使用は客観的に見ても一時使用ではない。」
として立退問題が起きるケースが多いのです。
裁判所の判断は厳しい。
一時使用賃貸借の特約があったとしても客観的に見て一時的・臨時的と認められないため、
法的な一時使用として認められないということが多いのです。
そのため、通常の借家権が発生することになります。
一時使用貸借をめぐるトラブルを未然に防ぐためには、貸主の建物に対する使用計画が確定している必要があります。
また、借主が何故一時的にその物件を借りるのかという事情をできるだけ具体的に書面化しておく必要があります。
なるべく、具体的に細かく書けるだけ書いた方が良いでしょう。
「一時使用」の期間は法律では明確にされていません。
判例ではせいぜい1年以内の期間です。2~3年貸しては、なかなか一時使用とは認めてもらえないのが実状です。
このように一時使用賃貸借では普通の借家権を発生させないのです。
借地借家法で借家権が発生しないケースは期限付建物賃貸借か一時使用賃貸借しか考えられなのです。しかし、貸主が実務上有効に活用できるというものではなのです。
(331-2)