分譲マンションは、概ね12年から15年周期で大規模修繕を行います。コンクリートは中性化しなければ、100年以上の耐久性があります。そのため鉄筋コンクリート造は修繕をしなくても良いと思われている方もおられるようです。たいへんな間違いです。マンションの防水性能は、概ね10年?15年で劣化します。外壁も劣化します。鉄部は6?7年で錆び始めます。マンションでは大規模修繕は必須です。ところが、大規模修繕を体系的に学べる講座はありませんでした。

===大規模修繕は誰が担うのか===
かつて、マンションは一時的な仮の住まいと思う方が60%以上でした。最近はマンションを終の住まいと考える方が60%以上と逆転しました。そうなると快適で資産価値の高い住宅であって欲しいと考え方が変わってきます。ところが大規模修繕を管理会社任せにしている組合がとても多いのです。「専門的な知識がない」「建設した会社系列だから」「経験がありそうだから」「管理費払っているので任せるのが一番」等々。調査では、他人任せの意識があまりにも多いのです。この他人任せが、マンションの資産価値が低くなってしまう原因です。
マンションの資産価値を維持したり高める担い手は、区分所有者一人ひとりです。管理会社の本来の役割は、管理組合に適切な情報を提供し、大規模修繕の仕様を決めたり工事業者の選定を行うことです。これが「監理」です。監理にかかる費用にはガイドラインがあります。

===長期修繕計画===
2022年に「マンション管理適正化法」が改正されました。改正のポイントは「長期修繕計画」の作成です。「長期修繕計画」の作成は誰もが簡単にできることではないため、多くは、管理会社や設計事務所に外部委託するようです。私達はこれを可能なかぎり管理組合で行うことを提案しています。管理会社は専門家の立場で、作成のアシストすべきだと考えています。「長期修繕計画」を自ら作成することで、マンションの問題点、将来のあるべき姿がわかってきます。
建築に知識の無い方には、難しい作業と思われますが、少し学べば意外と簡単なのです。そのうえで専門家の支援を受けると、驚くほどマンションのあるべき姿が理解できます。

===大規模修繕か建て替えかの選択===
定期修繕を行っても、100%は元のようにはなりません。また築40年近く経つと、近隣の新しいマンションに比べると見劣りするようになります。また暮らし方にも不便なところが目立ち始めます。修繕では、資産価値を維持できなくなります。この時期に、大規模修繕か建て替えかの検討を始めます。国土交通省では、「大規模修繕か建て替えかの判断マニュアル」を、公表して早めに検討することを薦めているようです。この講座では、国土交通省のマニュアルを解りやすく解説しています。
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不動産トラブルトピック(Vol.3)
<更新拒絶>(1)
(質問)

家主が「次回の契約更新はしない」と言ってきたが、泣く泣く出て行かざるを得ないのでしょうか?

(回答)
定期借家契約ではない一般の賃貸借契約の場合には、家主が、契約更新の拒絶を行うためには、
契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に通告することと、家主が更新を拒絶する(退去を求める)「正当事由」が必要です。

家主が、「次回の契約更新はしない」と言ってきた時期が問題ですが、「契約終了の1年前から6ヶ月前までの間」でなければ、「正当事由」をうんぬんする前に、主張そのものが認められないことになります。
なぜなら、この期間は、借地借家法の強行規定に当たり、強行規定に反するものは無効だからです。

次に、「正当事由」がなければ、家主として更新拒絶することができないのですが、「正当事由」そのものは、非常に厳密に解釈されており、よほどのことがない限り、家主の主張どおりに認められることはありません。

「正当事由」に関しては、相談内容では一切触れられていませんので、家主に正当な事由があるかどうかもわかりませんが、理由を明らかにしていないところを見ると、そもそも正当な理由がまったくないのではないかと思われます。

いずれにしても、借地借家法の第28条によれば、「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」とされており、
家主が建物を必要とする事情と借主のそれとを比較したり、建物の使用状況、そして、家主が退去を求めるに当たって、財産上の給付、すなわち、立退き料をいくら支払うつもりなのかなどを総合的に考慮したりして、正当事由があるかどうかが判断されるのです。

従って、家主が、単に、「契約期間が終わったら出て行ってくれ」と言っても、従う必要は一切ないのです。