6月14日に「改正・空き家対策特別措置法」が公布されました。今年の12月には施行されます。今回の改正のポイントは、①空き家の活用拡大、②管理の確保、③特定空き家の除却の3点です。その内容は、空き家の活用がしやすくする規制の合理化とともに、空き家を減らすために固定資産税の増税、行政代執行の円滑化となっています
===空き家の活用拡大===
地域の再生拠点、観光振興を図る区域等を指定して規制の合理化を行い、用途変更や建替えを促進する内容となっています。また財産管理人に、所有者不在の空き家の処分が行えるようになります。
市区町村長がNPO法人、社団法人等を空家等管理活用支援法人に指定し、 所有者等への普及啓発、相談対応を進める内容となっています。
===空き家の固定資産税===
これまでは、放置すれば倒壊もしくは保安上危険、衛生上有害となる空き家を「特定空き家」と指定して除却をすすめ、改善されない場合は最終的に行政代執行して除却をすすめてきました。今回は、さらに一歩踏み込んで、放置すれば特定空き家になるおそれがある空き家を「管理不全空き家」と指定することになります。市町村長は、指定された空き家の所有者に改善を指導・勧告します。それでも改善がなされなければ、住宅用地特例が解除され200㎡以下の空き家の場合、固定資産税が6倍になります。「管理不全空き家」は約20万件あるとされています。
===所有者不明の空き家===
改正空き家対策特別措置法の具体的な進め方は、今後発表される政令等に応じて進めていくことになります。多くの空き家が利活用されることを期待したいものです。とはいえ、今回の改正で全国にある900万戸近い空き家のうち、今回の対象となるのは、一部に過ぎないのも事実です。
もうひとつ空き家対策が進まない原因のひとつに、空き家空き地の多くが所有者不明ということです。全国の所有者不明の土地は約410万ha、九州より広い面積です。固定資産税を請求しても宛先不明で返ってきます。相続土地の登記義務化で解消したいと考えているようですが、なかなか難しいと思われます。これらの所有者不明の土地が管理不全であれば、今回の改正は片手落ちいなるのではないでしょうか。積極的な国有化を進められることを期待します。
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賃貸借契約豆知識(Vol.2)
<契約金の支払い>
(質問)
契約金の残金支払いを入居日直前まで待ってほしいと言ったが断られた。
(回答)
建物の売買契約などでは、当事者双方のリスクを軽減するために、同時履行と言って、売買代金の支払いと不動産の移転登記手続きを同時に行うことが多いのですが、賃貸借契約ではどうなのかということがポイントです。
つまり、賃貸借契約においても、「同時履行の抗弁権」を主張できるかどうかということです。
「同時履行の抗弁権」を主張するためには、次の3つの要件を満たす必要があるとされています。
一つ目は、ひとつの双務契約(どちらも何らかの義務を負っている契約)から生じた双方の債務が存在すること、賃貸借契約は、家主には借主に物件を引き渡す義務があり、借主には家主に契約金を支払う義務がありますので、これに該当します。
二つ目は、相手方の債務が履行期にあること、賃貸借契約では、借主の立場からすると、家主の履行期(=物件の引渡し日=カギ渡し日)はまだ来ていませんので、この点は要件を満たしていません。
そして、三つ目が、相手方が自己の債務の履行又は履行の提供をせずに履行を請求してきたこと、つまり、賃貸借契約においては、カギ渡し日を過ぎたのに、カギ渡しをしないのに、契約金の支払いだけを要求してきたという場合ですが、これもカギ渡し前ですから、用件には該当しません。
つまり、入居直前まで契約金の支払いを保留するということは、法律上では認められないということになり、家主との協議次第ということになるのです。
一般に、家主は、入居直前のキャンセルを恐れるために、契約金の支払いを早めにしてもらおうとしますので、どうしても、入居直前まで費用を用意できないのであれば、その説明をきちんと行う一方で、「キャンセルは行わないし、万が一契約金の支払い前にキャンセルする場合でも、
契約金は全額支払う」というような念書を家主に提出して了解を得るというような方法を検討してみてはどうでしょうか?