国土交通省が2017年に実施したアンケート調査によると、定期的に大規模修繕を実施している個人オーナーの賃貸住宅は、16.6%という少なさです。
傷んできたのでやむを得ず実施したケースを加えても40%という少なさです。管理を業者に委託している場合でも56%程度です。

反対の目で見ると、半数の賃貸住宅では大規模修繕をしていないのです。これでは、建物が傷むのは当然です。

===なぜ、大規模修繕を実施していないのか===

修繕または大規模修繕を実施していない理由をみてみると、「資金的余裕がない(28.1%)」の割合が最も高く、次いで「必要性が理解できない(22.6%)」となっています。
委託管理をしている場合でも「管理業者やサブリース業者からの提案がない(21.0%)」との理由で実施していません。

どんな建物でも、新築後15年までは、素人目には傷んでいるように見えません。だから必要性が理解できないのでしょう。しかし20年を超えたころから傷みが目立ち始めます。
塗装外壁ではチョーキングと言われる劣化現象が発生します。コーキングにもヒビ割れが目立ち、雨漏りのリスクが高くなります。そこでやむを得ず修繕工事をせざるを得なくなります。

===長期修繕計画の作成===

管理業者やサブリース業者は、なぜオーナーに提案しないのでしょうか?

実は提案しないのではなくできないようです。管理業者は不動産の専門家かもしれませんが、意外なことに建物の知識はあまり持っていません。
また知識はあっても少人数で多くの物件を担当していると、そんな余裕はないようです。

そこで「長期修繕計画」の作成の重要性がでてきます。
2017年の国土交通省の調査報告では、「長期修繕計画」を作成し、計画的に大規模修繕を実施した効果として「高い入居率が確保できた(39.3%)」「家賃水準を維持できた(42.8%)」「長期にわたり住宅性能が維持できた(30.4%)」が、あげられています。

===賃貸住宅修繕共済制度===

先のアンケートでは、「資金的余裕がない(28.1%)」となって、ほとんどの賃貸住宅のオーナーは、修繕積立金を積み立てていません。

というか現在の税制では、区分所有マンションの投資では、「修繕積立金は経費扱い」ですが、賃貸アパートの修繕積立金は、経費にならず利益として課税されます。
これでは将来のために修繕費を積み立てる動機が低くなってしまいます。
入居率も低下して、ますます資金の調達が難しい状態に……そんな事態を防ぐために生まれたのが「賃貸住宅修繕共済」です。令和3年(2021年)11月にこれは国土交通省の認可を受けた「全国賃貸住宅修繕共済協同組合」が運営する、共済制度です。

積み立てた共済金で、大規模修繕の際には補償が受けられます。共済を利用すれば、例えば毎年100万円の掛金をかけると、この費用を経費化することができます。オーナーの所得税率が33%だとすると、毎年の税負担がおよそ40万円分減るということです。そして10年後には1200万円の補償が受けられます。

黙っていても家賃が入ってくる時代ではなくなりました。ひとつひとつ勉強して「賢く儲ける大家」を目指しましょう。