日本三大商人といえば浪速(大阪)商人、伊勢商人、近江商人と言われています。伊勢商人の代表は、三井越後屋呉服店(現在の三井財閥)ですね。
近江商人の代表としてあげられるのは伊藤忠商事、高島屋、住友財閥と言われています。

他にもいろいろな企業がこの3大商人をルーツとしています。そのなかで今回は「近江商人」について書きます。この3大商人には、それぞれに特徴があります。

===「三方良し」===

なかでも近江商人の経営哲学は「三方良し」です。いろいろな説がありますが、初代創業者伊藤忠兵衛が、近江商人の先達に対する尊敬の思いを込めて発した『商売は菩薩の業(行)、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの』とされています。
もう少し今の言葉で言えば「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」ということです。伊藤忠だけではなく、多くの近江商人にルーツを持つ会社では、この哲学を大切にしていると言われています。
商売(事業)は、その時だけの儲けを目指すのでは、持続性がありません。売って利益を得るのは当然ですが買った人が良かったと喜んでいただかなければ、次はありません。WIN&WINの関係は重要ですが、これをもう一歩踏み込んだのが「世間よし」です。

===「三方良し」は多くの実業家の経営理念になっている===

「三方良し」は、近江商人だけではありません。渋沢栄一は「一個人のみ大富豪になっても、社会の多数が貧困に陥るような事業であったならば、その幸福は継続されない」と説いています。

京セラ創業者の稲盛和夫は、「より良い仕事をしていくためには、自分だけのことを考えて判断するのではなく、まわりの人のことを考え、思いやりに満ちた「利他の心」に立って判断をすべきです。」と説いています。

まず事業の目的は社会にとってよきものでなければならない。社会が必要とするものを生み出し、社会の発展に寄与するものでなければならない。すなわち事業には社会的意義がなければならない。ということです。

===不動産業界も「三方良し」を目指すべき===

相談に多くの方が相談に来られます。そのような方に接していますと、自分の利益だけを目的としかしていないのではないかと思ってしまいます。 

例えば、目に見えないところで建築基準を守らず利益を増やしている会社。利益だけを追求して会社をくいものにするハゲタカ不動産ファンド。借地借家法を悪用しているサブリース会社。
こんな会社ばかりが目立つから、不動産業界は、世間から信頼されなくても仕方ありません。

「三方良し」不動産で言えば、売り手と買い手だけではなく、地域社会にも喜ばれるということです。次の時代の「不動産会社」は、地域と環境に貢献する事業者でなければならないと考えます。
不動産事業でも「三方良し」の経営哲学をもって事業を進める企業が少しずつ増えていただけるのではないかと期待したいと思います。