これまでは、不動産の相続登記を必ずしなくても固定資産税等を支払っている限り相続登記をしなければ問題はありませんでした。
そのため何十年前になくなった曽祖父の不動産の登記上の所有者がそのまま放置しても問題はありませんでした。
しかし令和6年度からは相続登記が義務化されます。
===所有者不明の土地 720万ha ===
日本全国で所有者不明の土地が720万haあるとされています、これは北海道とほぼ同じ面積です。
この経済損失は2040年までの経済的損失は、少なくとも約6兆円と試算されています。
「所有者が不明なための固定資産税の未納」「東日本の震災後に、所有者が分からず同意を得られないため被災地の高台移転など復旧・復興事業が進まない」「道路建設をはじめとした公共事業や民間取引でも支障」「土地の管理が行き届かなくなると不法投棄されたゴミが異臭」「雑木が生い茂ったりして近隣にも悪影響」など大きな問題となっています。
この所有者不明の土地は、今後ますます増えると考えられます。
そこで、この所有者不明の土地を減らすための、一つの方策として「相続登記の義務化」が決まりました。
===不動産登記法 ===
不動産登記法は、私的自治の原則から「当事者申請主義」となっています。
これは「官庁若しくは公署の嘱託」により行われる以外は、当事者しか登記ができないのです。
また、登記をしなければならない申請義務はありませんでした。
田舎の山林や農地の登記上の所有者が3代前の曽祖父や4代前であるケースは珍しくありません。それでも、なんの問題もありませんでした。
それが令和6年4月1日からは、相続(遺言も含みます)によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなります。
正当な理由がないのに登記義務に違反した場合、10 万円以下の過料の適用対象となります。放置しておくことはできないのです。
===相続登記の書類 ===
義務化されても登記は、当事者がしなければならないことは変わりはなく、一般的には司法書士に登記を依頼することになります。
しかし必要書類さえ集めれば、当事者自身ができないほど難しいことはありません。
必要書類は8種類ありますが、そのなかで大変なのは「相続関係説明図」(系図)と「遺産分割協議書および相続人全員の印鑑証明書」です。
例えば登記上の所有者が3代以上前であったりすると相続権者は時に数十人になることも珍しくありません。
その系図を作成し、その全員の印鑑証明が必要になります。
相続の可能性がある場合には時間のある時に系図を作成しておくことは無駄にはならないかと思います。
そして法事などの折に、日頃はお付き合いのない親戚の方々にお聞きすると知らないことがわかったりします。
また親戚としての親しみを感じていただけるでしょう。