10月18日のNHKクローズアップ現代で「”老いるマンション”老朽化と高齢化にどう備えるか」を視聴され驚かれた方もいらっしゃるかと思います。

築40年を超えるマンションは、今後ますます増えると言われ​、​番組を見て危機感を感じたかたも多いようです。

番組では解決例も少し取り上げていましたが、具体的なことは示されていませんでした。

​また、マンションは一戸建てのように簡単には建て替えられません。実際建て替えられたマンションは、URなどを除くとごくわずかしかありません。

そこで、どのように備えるかについて、ここに1件のマンション再生の成功事例を紹介いたします。

===築50年のマンションでも、資産価値は上げられる===

1972年竣工の440戸の大規模マンション

建設当時は、高台の高級マンションと言われていましたが、築25年過ぎたあたりから資産価値が下がりはじめリーマンショック後、ついに一戸あたり 900万円を切ってしまいました。

そこで有志が集まり長期計画を立て、20年にわたり、さまざまな修繕工事とともにグレードアップ工事をしました。

この間の主な工事は、「2度の大規模修繕」「排水管の更新」「給水管を直結給水方式に更新」「屋上の耐久性30年の防水工事と断熱化」「窓のサッシを複層ガラスに省エネ化」「玄関扉の耐震化」「インターホン設置と宅配ボックス」「耐震診断」「インターネットの整備」「ケーブルテレビ」などです。

これらの工事費の総額は十数億円にも及びました。そして今年、築51年を迎えました。
このマンションは、空室がでてもすぐ売れてしまう人気マンションです。

築50年でも人気があり若い世帯でも購入しやすい価格のため、子どもたちの遊ぶ姿が増えてきました。
住民の高齢化の傾向も一段落しました。最近の売買価格は、一戸あたり2500万円近くになりました。

一番安かったときから比べると、3倍まで資産価値が上がったことになります。

===修繕積立金===

これだけの工事をしても修繕積立金はほとんど上げずにすみました。
まず取り組んだのは、一般管理費の徹底した削減です。管理会社の協力も得て20%以上削減しました。

その結果管理費の余剰残高を修繕積立金に振替できました。工事費も小さな工事であっても、相見積もりをとるなどを徹底。
各種の補助金も申請してきました。もうひとつは、管理費の滞納問題にも取り組んで、一時期2000万円以上あった滞納も今は100万円にまで減らしました。

===長期管理計画委員会===

まず最初に取り組んだのは、理事会の諮問機関として長期管理計画委員会の設置でした。

理事会の理事の任期は多くは2年で理事会では、長期計画はなかなかできません。
そこで理事長経験者を中心に長期管理計画委員会を設け、30年長期修繕計画、資金計画、建物検査、管理規約、コミュニティの充実など、あらゆる問題を話し合い、計画をたて実施してきました。

その結果、築50年でも資産価値が上がり続けるマンションに再生されました。

ここで重要なのは、管理会社任せにしなかったことです。管理会社は営利事業でマニュアルに基づいた管理しかできません。
管理業務担当者は多いと20件以上のマンションの管理をしているため、個別の対応はできないのがあたりまえです。

一つとして同じマンションはありません。一人ひとりの区分所有者が自分の資産と考えて取り組んでこそ、マンションは生まれ変わります。
 
今後、この問題について、より詳しく具体的にご紹介する予定です。