質問

賃貸借契約に小修繕は賃借人の負担とする特約があるのですが、すべての修繕費を負担しなければならないのでしょうか。

回答

このような特約や修繕費を口実に敷金返却を家主が拒否してくるケースにおいて、参考になる事例に名古屋地裁平成2年10月19日の判例があります。

<内容>

賃貸契約書には「賃借建物についての修理、取替え(畳、フスマ、障子、ガラス、照明器具、スイッチ、壁、床、その他の外回り建具を含む建具、浴槽、風呂釜、その他の小修繕)は賃借人の負担において行う」という特約がありました。
また、「故意過失を問わず、本件建物に毀損、滅失汚損、その他の損害を与えた場合には、損害賠償をしなければならない」という特約もありました。

この特約を根拠に裁判となった判例です。


<判決の要旨>

「修理特約は、一定の範囲の小修繕についてこれを賃借人の負担において行う旨を定めるものであるところ、 特約は、一般に民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたものと解すべきであり、積極的に賃借人に修繕義務を課したものと解するには、特別の事情が存在することを要する。

本件賠償特約は、汚損等についての損害賠償義務を定めるが、賃貸借契約の性質上、損害には賃借物の通常の使用によって生ずる損耗、汚損は含まれないと解すべきである。
賃貸人が請求する畳、襖、障子、クロス、絨毯の汚損は、建物の通常の使用によって生ずる範囲のものであったと認められる。

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