このメールマガジン83号でお知らせしましたように、現在国会で区分所有法改正の審議のみ込みです。
その内容を今回は、「区分所有建物の再生の円滑化を図る方策」について、お知らせします。


===共用部分の修繕ではない変更決議を円滑化===

現在は共用部分の変更は、特別決議(4分の3以上)が必要です。この要件を満たすことは容易ではありません。
そのため必要な工事が迅速に行えない場合がありました。

今回の改正では、多数決割合を単純に引き下げる案のほか、外壁崩落のおそれなど一定の客観的要件を満たした場合には
多数決割合を規約で緩和することを認めるよう審議されます。

===建て替えを円滑化するための仕組み===
①多数決要件の緩和

現行は、建て替え決議の多数決要件(5分の4以上)という高いハードルとなっています。
このため建替えでなければ再生が難しいマンションで、建替えが行えない場合があります。

特に築50年を超えるマンションの場合は、1981年以前の建設で旧耐震基準で設計されているため
「耐震性不足」が指摘される場合があります。

そこで一定の要件「要除却認定マンション等」があれば、(4分の3)で建替え決議されることが検討されています。

②賃借権の消滅

現行の法規では、建て替え決議がされても専有部分の賃借権等は消滅しないため、賃借人が拒否しますと、
建て替え工事の円滑な実施を阻害する場合があります。

建て替え決議がされた場合には、一定の手続を経て賃借権を消滅させることができます。

===区分所有関係の解消・再生のための新たな仕組み===
①多数決による建物・敷地一括売却や建物の取壊し等
建物・敷地一括売却や建物の取壊し等を行うには、区分所有者全員の同意が必要であり、事実上困難なため、
多数決による一括売却や取壊し等を可能とする仕組みが、審議されています。

②多数決による一棟リノベーション工事
既存躯体を維持しながら、専有部分を含む建物全体を更新して、実質的な建て替えを実現する「一棟リノベーション工事」が
技術的に可能になっていますが、区分所有者全員の同意が必要で事実上困難です。

建て替えと同等の多数決による一棟リノベーション工事を可能とする仕組みです。
経年マンションでは、上階の上下水道管が下の階の天井にあり、改修工事ができないことや、
エレベーターの止まらないフロアの階などバリアフリー工事が困難でした。

「一棟リノベーション工事」では、専有部分の面積の変更なども可能となります。