昨年から法制審議会でまとめられた区分所有法の改正が、今国会で審議されます。改正法案が通過後、約半年程度かけて詳細が決まる見込みです。その後マンションによっては規約の改正が必要になります。改正は多岐にわたりますので、数回に分けて内容をお届けします。
===改正による課題解決===
2030年には、築40年以上の老朽化したマンションが急増する見込みです。高経年マンションの増加は、区分所有者の高齢化、また相続等を契機に区分所有者の非居住化が進行すると考えられています。
非居住者が増えると、大規模修繕・建替などマンションの再生の決議に必要な賛成が得るのが困難となり、現状の法のままでは、管理不全マンションをたくさん生み出してしまう恐れがあるため、先に手を打っておこうということです。
また、今後も大震災が発生することが考えられます。そのため、被災したマンションが再生しやすいような法改正が必要と考えたものです。
===改正の主な内容===
今回の改正は
①「区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」
②「区分所有建物の再生の円滑化を図る方策」
③「被災区分所有建物の再生の円滑化を図る方策」の3点です。
この3点を一度にすべてを説明できませんので、3回程度に分けて説明します。
まず今回は「区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」について、その骨子を記します。
管理の円滑化は
①「集会の決議一般を円滑化するための仕組み」
②「区分所有建物の管理に特化した財産管理制度」
③「共用部分の変更決議を円滑化するための仕組み」
④「その他の管理の円滑化に資する仕組み」の4つです。
===区分所有建物の管理の円滑化を図る方策===
「集会の決議一般を円滑化するための仕組み」は、所在等不明の区分所有者が、円滑な決議を阻害しているため、裁判所への申請で、所在等不明の区分所有者を決議の母数から除外することができます。
「区分所有建物の管理に特化した財産管理制度」では、外国に居住している者に国内代理人選任を義務付けることを規約で定めることができるようになります。
「共用部分の変更決議を円滑化するための仕組み」は、共用部分の変更決議の多数決要件(4分の3)を満たすことは容易でなく、必要な工事等が迅速に行えない場合があるため。一定の客観的要件を満たした場合には多数決割合を規約で緩和することを認める。
「その他の管理の円滑化に資する仕組み」は、区分所有建物の管理に関して所有者が負うべき責務があるとしたうえで、共用部分に損害賠償請求権等が発生した後、一部の区分所有権が転売されると、管理者は区分所有者の全員につき、請求権を代理して行使できなくなるとの指摘があり、そのため、管理者が請求権を代理して行使できる仕組みができます。
今回の改正について、今後日本住宅性能検査協会ではセミナーを開催して、皆さんにお知らせする予定です。