===鉄筋コンクリートの耐久性===

鉄筋コンクリートの建物の法定耐用年数は47年ですが、これは、税務上の減価償却の基準です。実際の寿命ではありません。

都市工学の専門家に聞きますと「メンテナンスさえ、きちんとすれば、鉄筋コンクリートは、研究によると、150年は耐えられる」とのことです。
コンクリートの中性化の終了時期は120年で、外壁の仕上げがきちんと維持されていると150年の寿命だそうです。

とはいえ、150年以上経過した「鉄筋コンクリート造の建物」は、どこにもありません。
日本の一番古いコンクリート造は、今は使われていない1877年築の伊王島灯台退息所で、現存の鉄筋コンクリートでは、1911年に建設された横浜の三井物産の横浜支店1号館です。

集合住宅(日本で言うマンション)の世界で最初の鉄筋コンクリート造は、1906年に建造された、パリ「フランクリン通りの集合住宅」です。
もちろんまだ住んでいるそうです。日本で一番古い集合住宅は、世界遺産の長崎の「軍艦島の7階建て集合住宅」で1916年の建築です。

この軍艦島の集合住宅は、修繕すればまだ住める状態とのことです。

今も住まわれているのは、都内では墨田区の80年前の集合住宅、大阪ではトヨクニハウスが1932年建築ではないかと言われています。大阪のトヨクニハウスは途中40年間空き家だったそうです。

===マンションの建て替え===

最も古い分譲マンションは、東京の渋谷の「宮益ビルディング」で1953年に東京都が分譲したものです。
11階建てでお金持ちマンションと言われたそうです。50年後の2003年には、老朽化のため一度建て替え決議がされました。

そのときはリーマンショックが起きて頓挫しました。その後も老朽化がかなりすすみ、2012年に再度建て替え決議が成立しました。
しかし反対者の訴訟があり建て替えは進展しませんでした。ようやく2022年に、15階マンションに建て替えることとなりました。

===マンションの老朽化===

鉄筋コンクリートの寿命は150年あるのに、なぜ建て替えが必要なのでしょうか。マンションはオフィスビルなどとは違い、居住性が重視されなけれならないためです。

50年前とは、耐震基準も違ってきています。居住空間としての部屋の高さも高くなっています。スラブや壁の厚さも充分ではなく、遮音性が高くありません。
そして何より設備には、更新できないものも出てきています。

VOL14で紹介しました築50年でもなお資産価値を維持し続けているマンションでも、これらの問題には対処できていません。
10年後の2033年には築50年のマンションは129万戸になるとされています。

築50年でメンテナンスが不十分のマンションは、スラム化するのではないかと危惧されています。これは今後の日本の大きな社会問題になるかと思われます。

NBC日本橋ビジネス資格教育センターでは、今後この問題に取り組んでまいります。